アート

森美術館のSTARS展で現代日本を再考

2020年の暮れに森美術館(MORI ART MUSEUM)で開催のSTARS展に。

日本人現代アーティストとしてまさにトップランナーの6人に絞っての5か月に亘る企画展。ここまでの企画をよく実現したと森美術館さんには驚かされます。

各作家の初期と近年の作品の対比を行い、時代や社会とアートがどのような関係を持っていたのかを改めて問いかけるテーマは、2020年のコロナ禍という既存の社会構造を大きく変化させる時代に呼応した内容と言えるでしょう。

今回、偶然「シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略」を直前にざっと読んでいたのですが、来館者が写真を撮影→シェア→次の来館者に繋げるというマーケティングがまさに目の前で行われているのを目撃できました。「インスタ映え」を狙うのではなく、必要な情報を提供し、アート鑑賞を楽しむことを正攻法で行い、結果的に拡散に繋がるという手法は勉強させられます。

本展、作家ごとに展示室が割り当てられ、6人の異なる世界観を時間を跨いで鑑賞する形となっていました。個々には書ききれないのです一番引っかかったのは村上隆でです。

村上隆を教科書的に書くと「日本のオタク文化やサブカルチャーを発送の源泉として、日本初の美意識を世界に発信」とかになるのかと思うのですが、今回出品されていた「原発を見にいくよ」という8分少々のショートムービーは見ていて離れられなくなり、日本語版と英語版で3回転ぐらい見入ってしまいました。

「原発反対のデモに参加してみたけどよく分からなかったので、福島原発を見に行って意外と楽しかった。デモにはもう参加しないで他の物を見に行こう」というストーリーですがポップな音楽と画面の中で【デモの争乱とカップルのドライブ】【光り輝く東京の夜景と雑然とした下町風景にあるシェアハウス】【人類史上まれにみる事故の福島原発と『おいしいもの食べられてよかったね♪』といった日常】あらゆる対比が映像の中で繰り広げられながら進行していく。作品のメッセージ性については解釈がいろいろできるため言及しませんが、森美術館に設けられたキラキラした展示室で見るからこその価値があるともいえるビデオ作品です。

また、今回は村上隆の代表作とも言える《Ko²ちゃん》《マイ・ロンサム・カウボーイ》《ヒロポン》が展示されていました。ミニサイズは何度か目にしたことがあったのですが等身大は初見。迫力には驚かされます。ご本人のTwitterによると《マイ・ロンサム・カウボーイ》《ヒロポン》は保険の関係でもう日本では観られないと思う。だそうです。

明日(2020/1/3)までですが、日本人現代アート作家の大御所STARS。

名前は分からなくてもテレビなどで作品は知っている作家・作品が集結しており、併せて現代の日本社会についても考えさせられる必見の展覧会です。

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