アート

超絶技巧切り絵、根津美術館「きらきらでん(螺鈿)」

青山の根津美術館で2021年1月9日(土)から2月14日(日)まで開催されている企画展「きらきらでん(螺鈿)」へ。緊急事態宣言下ということもあり入場は完全予約制。前日までに締め切りなので当日ふらりと訪問することができないのは残念ではあるが仕方ないだろう。

 

そもそも螺鈿とは何かであるが、鮑や夜光貝の貝殻の内側のキラキラした部分(真珠層)を切り出して漆製品などに装飾として張り付ける切り絵のような技術である。簡単そうに思えるかもしれないが貝殻という扱いにくい素材を小さく切り出して、漆塗りした土台に埋め込んで、さらに段差がないように漆を塗っていくというとんでもなく手間のかかる技法でもある。

本展のオープニングとして工程の詳細についての説明がなされているが、頭では分かってはいた技術だが、途中工程を一つずつ見せられると奥深さを知ることができる。―貝殻の内側が綺麗だとは昔から思っていたが、それを使って何かを作ってみるといったことを夏休みの自由研究などでやってみれば面白かっただろうと今更ながらに思われる― 本展覧会の公式HPに「根津美術館の所蔵品を中心に、日本における螺鈿の受容と展開を編年的にたどりながら、影響関係にあった中国大陸・朝鮮半島・琉球、そして日本の螺鈿技術が概観できるよう構成」とあるように地域別、年代別の作品を流れとしてみることができ、重層的な比較しながら螺鈿鑑賞を行うことができる。

カットして貼っていくという技法ゆえくっきりとした輪郭が特徴で味わいであるのだが、あえて毛筆の筆致を螺鈿で表現した作品もいくつか出品されており、まさに超絶技巧の競演といえる。真珠層という天然物ゆえ色合いに緑や赤などと色合いにばらつきがあるが、その違いを利用して人物の表情や衣服、楼閣などさまざまな物を色鮮やかに浮かび上がらせ螺鈿という素材だからこそ可能な多彩な表現を楽しむことができる。

本展に出品されている作品がたまたまそうなのか、螺鈿作品全体の傾向と言えるのか分からないが

  • 中国大陸:画面全体に螺鈿を使って表現する。描かれたモチーフは人物を中心として、花・鳥・虫などを装飾として用いる
  • 日本:蒔絵などの技術と併せて螺鈿をアクセントとして取り入れた表現が主流。描くモチーフは植物や動物といった自然物が中心

文章だと分かりにくいかもしれないが、右図のリンクにある美術手帳の本展の紹介写真が分かりやすいかもしれない。

主観的なイメージではあるが

  • 中国物:中国料理店などにあるびっしりと螺鈿を使って人物や、龍・鳳凰を描く
  • 和物:蒔絵箱や硯箱では金粉を利用した蒔絵と螺鈿を組合わせた表現が主流

にも思える。螺鈿という同じ技術を用いながらも表現対象や手法に地域差が現れるという比較が本展全体の味わいであったといえる。

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