本展のオープニングとして工程の詳細についての説明がなされているが、頭では分かってはいた技術だが、途中工程を一つずつ見せられると奥深さを知ることができる。―貝殻の内側が綺麗だとは昔から思っていたが、それを使って何かを作ってみるといったことを夏休みの自由研究などでやってみれば面白かっただろうと今更ながらに思われる― 本展覧会の公式HPに「根津美術館の所蔵品を中心に、日本における螺鈿の受容と展開を編年的にたどりながら、影響関係にあった中国大陸・朝鮮半島・琉球、そして日本の螺鈿技術が概観できるよう構成」とあるように地域別、年代別の作品を流れとしてみることができ、重層的な比較しながら螺鈿鑑賞を行うことができる。
カットして貼っていくという技法ゆえくっきりとした輪郭が特徴で味わいであるのだが、あえて毛筆の筆致を螺鈿で表現した作品もいくつか出品されており、まさに超絶技巧の競演といえる。真珠層という天然物ゆえ色合いに緑や赤などと色合いにばらつきがあるが、その違いを利用して人物の表情や衣服、楼閣などさまざまな物を色鮮やかに浮かび上がらせ螺鈿という素材だからこそ可能な多彩な表現を楽しむことができる。